人工知能が変える君達若者と仕事の未来(1/2)

2017年6月1日
コラム

人工知能が変える君達若者と仕事の未来(1/2)

※この記事は、2017年5月に行われた講演を元に作成しました。
1 はじめに
 今日のテーマは、人工知能が変える君たち若者と仕事の将来です。人工知能についてテレビなどで皆さんもご覧になっていますよね。略して英語でAI(Artificial Inteligence)です。ほぼ毎日流れるAIに関するニュースの中で、自分の仕事がなくなってしまうかもしれない、AIの時代だから理数系ばっかり勉強すればいいのではないかなど、様々な言動が飛び交う中で、何となく将来が不安かもという方もいらっしゃるかもしれません。
 今日で、「そういうことか」、ということはだいたい分かるかと思いますし、自分が将来どんなことをするか、これからどの教科を重点的に勉強するか、さらにもっとその先、大学そして社会人としてどういう仕事について、自分が生き生きと幸せに楽しく仕事をしていくかということを考えるヒントになればと思います。
2 自己紹介・会社紹介
 うちの会社は12期目、設立12年目ぐらいです。東京大学の龍岡門という南門から歩いて2分の所にあります。契約社員を含み25名ほどですが、9割が東京大学の大学院生か大学生です。学生ですが、守秘義務もあって、会社の機密漏洩もなくきちんと仕事をしてくれています。
 こちらが、マービンミンスキー博士で、AIという言葉を作った人工知能の父と呼ばれる人です。1950年代のダートマス会議に出ましたが、惜しくも一年前に亡くなりました。
 これが、昨年の11月に出した本です。出版して3か月半で7刷、つまり6回増刷になりまして、今月末に韓国全土で出版を控え、夏に中国でも出版が決まっております。500ページ近い本ですが、数式などは書いていないので、ご両親が手に取られた場合には、関係しそうなところ、興味のある分野を拾い読みしてもいいかと思います。

(画像略)

 私が高校2年生の時、フジテレビに出演している時の写真です。クイズグランプリというクイズ番組が当時ございまして、11年間、毎週6回放送されていました。書いてあるとおりですが、ほんの10秒か20秒なので上映してみましょう。なぜこれをお見せするかというと、いくつかの意味があります。
(動画略)

1970年に始まりましたクイズグランプリはその後のクイズの一つのスタイルを確立しました…

野村:「科学の100!」
清水:「原子や分子の量の単位でアボガドロ数に等しい原子または分子の集団を基準とするのは?」

小泉:「野村君!」

野村:「モル(mol)!」

 ということで、クイズ番組です。WATSONというIBMのコンピューター、というか人工知能を聞いたことがある人はいますか。WATSONが有名になったのは、3-4年前にアメリカのクイズ番組Jeopardyというところで優勝したことがきっかけです。WATSONは、Ken Jenningsというクイズのチャンピオンを破りました。私もたまたまクイズ番組で、優勝ではありませんが準優勝をしたことがあります。全国で1万5千人が筆記試験を受けて、3人1組で、最後は3人×25組に絞られました。テレビに出て、その予選、準決勝、を経て、決勝で忘れもしない、惜しくも神奈川県立光陵高校に負けてしまいました。そこのチームリーダーの道蔦君は、その後ウルトラクイズで4回優勝し、ニフティーサーブというソーシャルメディアのクイズグループのリーダーになって、毎日クイズを作る仕事に就かれたものですから、あんな奴に負けたのはしょうがなかったのかなと後で思いました。フジテレビが開局50周年記念特番を作るときに、11年間で10万問の出題があった中で、フジテレビは、たった一つ、私が答えを言っているシーンだけを残し、あとのビデオテープ全部を捨てました。それが実は、今の人工知能の限界をよく示している問題でした。
 アボガドロ数というのは単なる数です。6×10の23乗、6っていう数字に0を23個つけてください。すごい数です。億、兆、京、…と1万倍ずつで日本語の数の単位ってありますよね。英語の場合は3桁ずつです。thousands、millions、billionsという風に上がっていきます。23乗つまり、0が23個というのはものすごい数です。水はH2Oですね。酸素はO2で、原子量が16です。これに水素が2個くっついて、18。このように、1個の水の分子は、水素の18倍の重さがあります。そして、水の分子が6×10の23乗個集まると、18gになります。これをアボガドロ数と言います。これは、大学の理系に入れば誰でも教わることです。その6×10の23乗個を1単位とする、分子とか原子の量を図る単位をなんというかというと、正解はモルと言います。今説明をよく聞いていた人は理解できたかと思います。水が18グラムあると、その中に水の分子H2Oが6×10の23乗あることになります。そのイメージがバーッと湧いた人は理解したといえ、これが人間の理解・学習です。
 ところが、WATSON君が何をやっているかというと、アボガドロ数に等しい分子や原子の量を1モルという日本語で書いてあり、同じ文の中にアボガドロ数っていう言葉とモルっていう言葉が一緒に出てくる、といって、このことを覚えているから、答えはモルかなと答えるのがWATSONなんですよ。これは、理解してないんです。国語の問題を出されて、もう試験時間がない、読んでいる時間がないというときに、近くにある言葉で適当に埋めるってやったことがありませんか?やったことある人?私はあるよ。皆さん正直ですね。WATSON君もこうやって答えを出しています。それでは理解していることになっていないですね。
 私の元研究仲間の、新井紀子先生は、一橋を出て、数学者・論理学者で現在国立情報学研究所の教授で、東ロボ君というものを作ろうとした人は、同じことに気づきました。東ロボ君って聞いたことありますよね。東大合格を目指して、各教科を、例えば国語は名古屋大学とか、数学担当、物理担当、歴史担当など分担しました。物理の問題も数学の問題も日本語で書いてありますよね。物理の問題とか全然解けないんです。偏差値40台前半以上絶対上がらないことが分かって、東大合格を諦める宣言を今年の初めに出しました。WATSON君のレベルでは大学入試で好成績を出せないってことがはっきりしたっていうのが今の一つの限界だったりします。このことをもうちょっと詳しく知りたい方のために、クイズ番組の準優勝に有効な一夜漬けっていう記事で、丸暗記でもある程度いけるけど、これでは人間の本当の最高の知恵にはたどり着かない、ということを日経ビジネスに書かせていただきました。
 もう高校2年のころから、私は問題文を最後まで読みません。早押し合戦ですから、最初の一言二言を聞いたときに、たぶん答えを推測してポーンと押すんですね。あの時どこまで理解して押したのかなど、自問自答して自分で考えて、自分が知っているということ、理解しているってことはどういうことだろうってことを高校のころから私はずっと考えてきました。それを専門にしたら人工知能の研究者になっていました。
 うちの会社の紹介の続きをぱらぱらとしていきましょう。非常に優秀な子たちがいます。大学生から大学院生が多いですね。
 中には中国人の留学生もいます。日本語を勉強して半年で東大大学院に合格してしまいました。湖南省といって、中国の南の出身ですが、一省だけで2億人の人口がいます。大学受験生が1学年に50万人いる中で4位という成績だった人がうちで働いています。
 今年インターンで契約社員として入社した一人が私の息子です。今18歳で、東京大学文科一類に入りました。
(画像略)
 これが12年前なんですけども、右下の写真が6歳のころの写真です。自分で手伝って焼いたパンをおばあちゃんに見せている時の顔です。一事が万事こういう子供でずっと好きなことしかやらずに去年まで過ごしていました。好きなことしかやらないから勉強しないかというと、実は勉強が大好きでした。SAPIXという受験塾があるそうです。これに小学5年の半ばから入りましたが、すごく遅かったんです。負けず嫌いなので頑張ったら、抜き打ちテストで日本史の年号当てクイズ150問で初めて全問正解したらしいとか言って帰ってきたこともありました。例えば戦国時代とか幕末についてはすべて覚えたと。覚えただけじゃなくて、私がペリーの来航は185~年で…というと、1年間違っていると指摘されました。1年違っているだけで社会の状況は違うんだと、延々と私は彼が小6の時に説教されたこともありました。これは、戦国無双っていう歴史を舞台にしたゲームにはまったのがきっかけで、歴史オタクになり、そのままつっぱしったってことがありました。数学とか英語でも同じように、一時期猛烈にはまって、英語は中1から中2にかけてで大学受験勉強の範囲は終わったと聞いています。ちょっと離れて生活していたのでよく知りませんが、中1から英語初めて、中1終わった時点で英検準1級とったとか、そんなことを言っていました。これと同じ調子ではまるといろいろいいことあるよという一例です。うちとしてもこういう人を採用するようにしています。
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 もう一つ、これはネットで全文を読んでください。ちょっと難しい言い回しもあるかもしれませんが、今年の東京大学の入学式での五神総長の式辞というものです。対話相手の背後にある価値観に対する感受性と想像力を備えた人材を育てたいということを言っています。
 世の中でこれが結論だこれが常識だこれが答えだと言われているものを敢えて疑うこと、真実はどこにあるんだろうと、その探り方、確かめ方を普通のやり方と変えて、自分で編み出しながら手探りで進んでいって、まだ答えがない問いと真摯に向き合っていくこと、そういう訓練をするのが大学というとこなんだよということを新入生に語っています。確かに、大学での勉強は、中学高校までの勉強とは全く違うものになります。世の中人類70億人が誰もがまだ知らない知識を新たに作り出すことが、大学以降の仕事になってきますので、それを一生の仕事にしようとする人が研究者としての人生を送ることになります。
3 知能って何?
 今、知識を作り出すと言いました。ここからが本題中の本題になりますが、知識と知恵と知能、知という言葉が付く違う言葉がいろいろありますよね。皆さん知能テストって受けたことあると思いますが、ちょっと変なクイズのような、素早く計算させるものだったかもしれませんね。ただ、知能が何なのか、これについてちゃんとした答えがまだないんですよ。科学的な研究のテーマになりきっていない、研究対象として、ちゃんとできていないっていうことがあります。
 私が本の中で書いたのは、まだ経験したことがない状況に直面して、その現場でそのトラブルに巻き込まれたとき、問題を解決するアイデアをその場で編み出すこと。実際にどう解決するかということも、その場で考え出して実際にその場でそれを証明して見せる。実際にやって見せて、この通り抜け出せましたよっていう、正解があるか分からないパズルを解くこと。自分が全く知らない部屋に閉じ込められて、抜け出す方法が中国語で書いてある場合に、それを何とかして解読して脱出すること、そういうことも一つの知能といえるかもしれないですね。
 こう定義したはいいけども、実はこれができるAIはまだありません。今の人工知能は人間が正解、答えをたくさん用意して、それを教え込んだら、その解き方は自動である程度あみだせるけども、最初はその正解を人間に教えてもらわないと、できないっていうのが今のAIです。そこを誤解している人が大人の中にもいっぱいいるので注意しましょう。
4 AIの特徴
 今のAIの特徴を少しずついろんな面から、見てまいります。計算機っていうくらいですから、コンピューターはもともと、計算は得意中の得意です。それも微分積分っていう言葉は高校以降の数学でやると聞いていますが、中3の人はもうやっているかもしれませんね。微分積分をやるなんて、コンピューターにとってはいとも簡単です。だからそれができてもびっくりする必要はなんにもないですが、こんなことは全くできなかったんです。こうやって、ペンを持って、ヒューッと立てる。これは2歳の子供にもできます。だけど、コンピューターにはこういうことが全くできませんでした。まず、3次元の世界を認識してこの内側と外側を区別し、棒みたいなものを持ってきて、ある位置に持ってくると、さっと置くことができて、中に立てかけることができそうだと思ってこれを実際にやる。こんなことを2-3歳の子供はできちゃうんですね。これがなぜできるのかは、最近までわかっていなかったし、今も完全にはわかっていません。コンピューターには全くできなかったことが、ある程度できるようになってきて興奮しているっていうのが今のAIの正しい姿なんですよ。ここを多くの人が誤解しています。まだ人間の脳の中で何が起こっているのかはわかっていないことだらけで、今世紀中にある程度解明できるといいなっていう段階です。ちょっと小難しいことを書いたけど、今皆さんは、意識を持っていますよね。多重人格、自分の中に二人の人がいるっていう特殊な精神の病を持っている人以外は人格は一つ、一つの意識があるわけです。しかし、それがなぜできていて、それこそ脳波や、MRI画像などを撮って脳の断面とか、その中の刺激がどう分布しているかを見ても、これが意識だとは、全く分からないわけです。現状解明できていません。どういうときに意識がどう働いてって理論もまだありません。
 本当の意味の人工知能、知能のお手本っていうのはないっていう身もふたもない話になっちゃうところはあるんだけども、実をいうと、人間の脳がどうなっているかは分からなくとも役に立つ機械は作れます。鳥がどう飛んでいるか分からなくても飛行機は作れたし、紙飛行機は飛ばすことできますよね。しかし、飛行機がなぜ空を飛べているか100%は分かっていません。怖いですね。でも99.999%安全なんです。自動車事故よりも、飛行機事故が起こる確率のほうが遥かに何桁も少ないです。そのような意味で安心していいんです。それでも、作れちゃうから、役に立つからいいやっていうのが工学です。理工学っていうけどもサイエンス、理学、科学はこれじゃダメなんです。なぜ飛べているかを100%、簡単な原理で説明できなければ、科学として解明したことにならないんですよ。理学と工学はここが違います。
 先ほどの先生に私の経歴をご紹介いただいたのを注意深く聞いていた人は、私が工学部出身の理学博士という変わり種ということに気づいたかもしれません。数学科とか物理学科を出ても、数学と物理だけをやっていていいですよっていう会社はあんまりないんですね。メーカーもサービスも、数学と物理だけやっていいポストを持っているということは絶対ないですね。理学部を出て、企業を出て仕事をして、工学博士になった人は何千人もいます。ですが、逆は数人しかいません。私がそのうちの一人ということもありまして、役に立ついいものを作ることを目指したら、サイエンスっていうものを一部極めることになったと。
 昔、ベル研究所という研究機関がアメリカにありました。世界一小さいものがよく見える電子顕微鏡を作りたいと思ったら、物理学の理論が間違っていることが分かりました。それをちょっと直すと、すぐに世界一の電子顕微鏡ができました。それでノーベル物理学賞を取った人がいます。結構いいものを作りたいと思ったら理論も極めるってことになるので、理科系を考えている人はそういった道も考えてみてください。医者を目指す人も、医者として患者が治ればいいと考えるかも知れません。これは確かなんだけど、一人でもより多くの患者さんを治したいと思ったら、山中先生のように、なぜ細胞の状態を初期化できないんだろうと、万能細胞を作ったらこんなにたくさんの人の難病が治せるのにと考えて、IPS細胞を開発してノーベル賞を取ったって人も出てきています。応用から入るっていうのはとてもいいキャリアにもなりますね。
 次に、今のAIをもう少し具体的にご説明します。
 次回に続く…

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